以下は白楽天の詩「母別子」の原文と、それに対するオリジナルの日本語賞析です。
母別子
母別子,子別母,白日無光哭聲苦。
関西驃騎大将軍,去年破虜新策勲。
敕賜金錢二百萬,洛陽迎得如花人。
新人迎来旧人棄,掌上蓮花眼中刺。
迎新棄旧未足悲,悲在君家留兩兒。
一始扶行一初坐,坐啼行哭牽人衣。
以汝夫婦新燕婉,使我母子生別離。
不如林中烏与鵲,母不失雏雄伴雌。
應似園中桃李樹,花落隨風子在枝。
新人新人聴我語,洛陽無限紅樓女。
但愿將軍重立功,更有新人勝于汝。
賞析
白楽天の《母別子》は、一編の悲劇的叙事詩である。詩の冒頭から、母と子の別れの悲しみが切々と描かれ、読者の心を深く打つ。
「母別子,子別母,白日無光哭聲苦。」 この三句で、すでに悲劇の幕が切って落とされた。母と子の別れは、人生の大悲である。白日も失色し、哭聲は苦しみを物語っている。この描写は、読者の心を一気に引きつけ、詩の世界に引き込む。
続く部分では、主人公の身辺事情が紹介される。関西の驃騎大将軍は、去年虜を破り、新たに功勲を上げた。しかし、この功勲の裏には、悲劇の種が潜んでいる。大将軍は、洛陽の如花の美女を迎える栄誉に浴し、旧人を捨ててしまった。この冷酷な行為は、人間の悲しい現実を如実に描いている。
「新人迎来旧人棄,掌上蓮花眼中刺。」 旧人は、かつては掌上の蓮花のように愛されたが、今や眼中の刺になってしまった。この対比は、人間の冷酷さを痛烈に批判している。さらに、「迎新棄旧未足悲,悲在君家留兩兒。」 新人を迎え、旧人を捨てることは悲しいが、それ以上に悲しいのは、君家に二人の子を残してしまったことである。この描写は、母と子の別れの悲しみをさらに深めている。
そして、「以汝夫婦新燕婉,使我母子生別離。」 あなたたち夫婦は新しく燕婉の楽しみを享けているが、それが故に我が母子は生別離の悲しみを味わうことになった。この句は、大将軍と新人の幸福と、旧人と子どもの不幸を対比し、人間の不公平さを痛烈に批判している。
最後の部分では、「不如林中烏与鵲,母不失雏雄伴雌。」 林中の烏と鵲は、母は雏を失わず、雄は雌を伴う。人間の世界は、それにも劣るではないか。この描写は、人間の世界の冷酷さをさらに強調している。そして、「應似園中桃李樹,花落隨風子在枝。」 園中の桃李の樹は、花は風に落ちるが、子は枝に残る。人間の世界も、このようにしてはならないだろうか。この句は、人間の世界に希望を託し、母と子の別れの悲しみを和らげようとしている。
総じて言えば、《母別子》は、母と子の別れを通じて、当時の社会風潮と人間の冷酷さを痛烈に批判した名作である。この詩は、白楽天の深い人間洞察と鋭い社会批判を如実に体現している。詩の一言一句から、我々は当時の社会現実と人間の悲しい姿を深く感じ取ることができる。