白居易の《把酒》は、人生の無常と達観を詠み上げる優美な詩篇です。詩は次のように始まります:
「把酒仰問天、古今誰不死。所貴未死間、少憂多歡喜。」
この四行は、白居易が酒を手に持ち、天に向かって問いかけている姿を浮かべます。「古今誰不死」と問うのは、人間は誰も例外なく死ぬという自然の法則を認識しつつ、生きている間に少なく憂い、多く喜びを持つべきであると訴えています。これは白居易の人生哲学の核であり、達観と楽観を表しています。
続く部分は、
「窮通諒在天、憂喜即由己。是故達道人、去彼而取此。」
ここで白居易は、人生の窮達(貧富栄枯)は天運に委ねられ、しかし憂喜は自分で決めることができると述べています。達観の人は、無益な憂悩を捨て、喜びを追求する姿勢をとるべきであると教えています。
詩の後半は、
「勿言未富貴、久忝居祿仕。勿憂漸衰老、且喜加年紀。」
白居易は、富貴を求めず、長い間禄仕に就いていることを恥じるべきではないと述べ、また、年を取ることを憂えるべきではなく、年を重ねることを喜ぶべきであると教えています。これは人生の各段階に適応し、楽しむ姿勢を示しています。
最後に、
「朝餐不過飽、五鼎徒為爾。夕寝止求安、一衾而已矣。」
白居易は、日常的な生活にも達観を取り入れています。朝食は過飽和せず、夜寝は安らかに一衾で十分であると述べています。これは物質的な欲望を抑え、精神的な安らぎを追求する姿勢を示しています。
白居易の《把酒》は、簡潔で深い言葉で人生の達観と楽観を詠み上げています。詩中に現れるのは、人生の無常に対する理解と受け入れ、そしてその中で喜びを探し求める姿勢です。