賣炭翁


「炭売りの翁」を一句ずつ鑑賞する

「賣炭翁,伐薪燒炭南山中。」

  • 開頭の「賣炭翁」は直接で物語の主人公を紹介し、印象的な始まり。「伐薪燒炭南山中」は、翁の生活の艱辛を具体的に描き出し、南山の深いところで薪を切り炭を焼く姿を浮かべる。

「滿面塵灰煙火色,兩鬢蒼蒼十指黑。」

  • この二句は翁の外見を細緻に描く。顔面は塵灰と煙火の色に染まり、両鬢は白髪に染まり、十指は黒くなる。これらの描写は、翁の長年の労働と生活の艱難を鮮明に表現する。

「賣炭得錢何所營?身上衣裳口中食。」

  • ここで質問を挟み込み、翁の炭を売ることの目的を問う。そして、「身上衣裳口中食」で答えを与える。これは翁の生活の現実を直接に反映し、単純で質素な生活を描く。

「可憐身上衣正單,心憂炭賤願天寒。」

  • 翁の境遇をさらに深く掘り下げる。冬の寒さの中で、翁は薄い衣裳を身に着け、それでも炭の値段が安くなることを心配し、天気が寒くなることを願う。これは翁の無力感と生活の苦悩を強調する。

「夜來城外一尺雪,曉駕炭車轍深雪。」

  • 季節の変化と翁の活動を描く。一尺の雪が降り積もり、翁は朝早く炭車を引いて行く。車轍が深い雪に刻まれる様子は、翁の努力と苦労を象徴する。

「牛困人飢日已高,市南門外泥中歇。」

  • 炭を売る旅の終わりを描く。牛も疲れ果て、人も飢え果て、日は高く昇り、翁は市の南門の外で泥の中で休憩をとる。これは翁の疲れ果てた姿を写し出し、人々の同情を引き起こす。

「翩翩兩騎來是誰?黃衣使者白衫兒。」

  • 突然、場面を変えて、二騎の出現を描く。誰かが来たのかと疑問を抱き、その人物は黄衣の使者と白衫の従者である。これは物語の転換点となり、翁の運命を変える出来事を予告する。

「手把文書口稱敕,回車叱牛牽向北。」

  • 使者たちの行動と言動を描く。文書を手に持ち、天子の命令を口に称え、炭車を回して北へ牽き出す。これは翁の無力な抵抗と運命の無常を表現する。

「一車炭,千餘斤,宮使騎馬與絹絲。」

  • 最後の交換を描く。翁は千餘斤の炭を用意して、しかし、報酬は宮使の騎馬と絹絲に過ぎない。これは翁の失望と悲しみを引き起こし、社会の不平等と残酷さを批判する。

この詩は、翁の生活の艱辛と無力感を細緻に描き出し、同時に社会の現実を批判する。読者は翁の境遇を同情し、社会の問題を深く考えるように導く。

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